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いま世界では1,700種以上の海産外来種が記録され、その数は年とともに増加の一途をたどっていると言われています。わが国からも50種以上の海産・汽水産外来種が知られていますが、やはりその数は年を追って増え続けています。外来種はこれまで、人の社会や経済、生態系にさまざまな問題を引き起こしてきましたが、それは陸上や湖沼・河川だけの問題ではなく、近年は海洋でも数多くの問題が指摘されるようになりました。

 そのため国連を中心に各国で海の外来種の侵入を未然に防ぎ被害を防止するためのさまざまな努力が続けられていますが、わが国でも2004年にいわゆる「外来生物法」が施行され、輸入や飼育、栽培、運搬などが規制される「特定外来生物」が指定される等、外来種の侵入とその拡散を防ぐ第一歩が始まりました。
 その後、2010年の生物多様性条約第10回締約国会議で採択された愛知目標の達成に資するとともに、外来種についての国民の関心と理解を高め、様々な主体に適切な行動を呼びかけることを目的として、2015年に「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(生態系被害防止外来種リスト)」が公表されました。
 
 生態系被害防止外来種リストには、計429種類(動物229種類、植物200種類)の外来種が掲載されていますが、その中で海産・汽水産種は計21種類(動物20種類、植物1種類)にとどまっています。また、現在のところ「特定外来生物」に指定された海産・汽水産種は、2種類(ディケロガンマルス・ヴィルロスス及びモクズガニ属全種のうちモクズガニ、オガサワラモクズガニ以外のもの)のみとなっています。しかしながら、海産・汽水産の外来種が引き起こす問題が小さいと考えて良いわけではなく、諸外国で起こっている海産・汽水産外来種によってもたらされたさまざまな被害をみるとき、私たちはその動向に無関心であることはできません。

 ここでは、わが国における海産・汽水産外来種の動向に注意を払い、これから起こるかもしれない被害を防ぐ資料とするため、これまでにわが国から知られる海産・汽水産外来種とそれらに関するいくつかの情報を紹介していきます。

 ただし、ここで取上げた外来種は国外外来種(国外起源の外来種)に限り、サキグロタマツメタなど日本で在来種として知られるものは、現在の新たな分布が国外からもたらされたものによると推定される場合であっても、このリストには含めませんでした。

日本の海産・汽水産外来種リスト (2024.12.25更新)
非意図的外来種(人間活動に付随して非意図的に自然分布域外へ移動分散した種)
刺胞動物門
 花虫綱
   シロセイタカイソギンチャク Aiptasiogeton hyalinus (delle Chiaje, 1825)
   コフキナゲナワイソギンチャク Cylista ornata (Holdsworth, 1855)
苔虫動物門
 裸喉綱
   フサコケムシ科の一種 Bugulina stolonifera (Ryland, 1960)
軟体動物門
 腹足綱
   トライミズゴマツボ Stenothyra sp.
   シマメノウフネガイ Crepidula onyx G. B. Sowerby I, 1824
   カラムシロ Nassarius sinarus (Philippi, 1851)
   クロコソデウミウシ Polycera hedgpethi Marcus, 1964
   シロタエミノウミウシ属の一種 Tenellia adspersa (Nordmann, 1845)
   コウワンミノウミウシ Trinchesia perca (Marcus, 1958)
 二枚貝綱
   ムラサキイガイ Mytilus galloprovincialis Lamarck, 1819
   ミドリイガイ Perna viridis (Linnaeus, 1758)
   コウロエンカワヒバリガイ Xenostrobus securis (Lamarck, 1819)
   イガイダマシ Mytilopsis sallei (Récluz, 1849)
   ウスカラシオツガイ Petricola sp. cf. lithophaga
   ホンビノスガイ Mercenaria mercenaria (Linnaeus, 1758)
環形動物門
 多毛綱
   アシナガゴカイ Alitta succinea (Leuckart, 1847)
   カニヤドリカンザシゴカイ Ficopomatus enigmaticus (Fauvel, 1923)
   カサネカンザシゴカイ Hydroides elegans (Haswell, 1883)
   ナデシコカンザシゴカイ Hydroides dianthus (Verrill, 1873)
節足動物門
 顎脚綱
   タテジマフジツボ Amphibalanus amphitrite (Darwin, 1854)
   
アカシマフジツボ Amphibalanus venustus (Darwin, 1854)
   アメリカフジツボ Amphibalanus eburneus (Gould, 1841)
   ヨーロッパフジツボ Amphibalanus improvisus (Darwin, 1854)
   ズージャンフジツボ Amphibalanus zhujiangensis Ren, 1989
   キタアメリカフジツボ Balanus glandula Darwin, 1854
   ココポーマアカフジツボ Megabalanus coccopoma (Darwin, 1854)

   ナンオウフジツボ Perforatus perforatus (Bruguière, 1789)
 軟甲綱
   ウデコブイクビワレカラ Paracaprella pusilla Mayer, 1890
   ツノオウミセミ Paracerceis sculpta (Holmes, 1904)
   イッカククモガニ Pyromaia tuberculata (Lockington, 1877)
   チチュウカイミドリガニ Carcinus aestuarii Nardo, 1847
   アオガニ Callinectes sapidus Rathbun, 1896
   ミナトオウギガニ Rhithropanopeus harrisii (Gould, 1841)

   ハクライオウギガニ Acantholobulus pacificus (Edmondson, 1931)
脊索動物門
 ホヤ綱
   ヨーロッパザラボヤ Ascidiella aspersa (Müller, 1776)
   ナツメボヤ科の一種 Ascidiella scabra (Müller, 1776)
   ナツメボヤ科の一種 Phallusia philippinensis Millar, 1975
   セイヨウツツボヤ Clavelina lepadiformis (Müller, 1776)
   クロマメイタボヤ Polyandrocarpa zorritensis (Van Name, 1931)
   ハルトボヤ属の一種 Microcosmus exasperatus Heller, 1878
   オーストラリアハルトボヤ Microcosmus squamiger Michaelsen, 1927
   マンハッタンボヤ Molgula manhattensis (De Kay, 1843)
緑色植物門
 緑藻綱
   アオサ属の一種 Ulva californica Wille, 1899
   アオサ属の一種 Ulva rigida C.Agardh, 1823
         
(= Ulva scandinavica Bliding, 1969; Ulva armoricana P.Dion, B.de Reviers & G.Coat, 1998)
褐藻植物門
 褐藻綱
   ヒラムチモ Cutleria multifida (Turner) Greville 1830
   *従来外来種とされてきましたが、最近の研究により在来種とする説が有力になっています。

意図的外来種(何らかの目的のために人間によって自然分布域外へ意図的に移動または放逐された種)
軟体動物門
 腹足綱
   カムチャッカアワビ Haliotis kamtschatkana Jonas, 1845
   アカアワビ Haliotis rufescens Swainson, 1822
   セイヨウトコブシ Haliotis tuberculata Linnaeus, 1758
 二枚貝綱
   イガイ科の1種 Sinomytilus sp.
   ヨーロッパヒラガキ Ostrea edulis Linnaeus, 1758
   オリンピアガキ Ostrea lurida Carpenter, 1864
   アメリカガキ  Crassostrea virginica (Gmelin, 1791)
   タイワンシジミ種群 Corbicula spp.
   シナハマグリ Meretrix petechialis (Lamarck, 1818)
節足動物門
 軟甲綱
   コウライエビ Penaeus chinensis (Osbeck, 1765)
   アメリカンロブスター Homarus americanus H. Milne Edwards, 1837
   ヨーロッパロブスター Homarus gammarus (Linnaeus, 1758)
   イセエビ科の一種 Palinurus elephas (Fabricius, 1787)
   イセエビ科の一種 Jasus lalandii (H. Milne Edwards, 1837)
   イセエビ科の一種 Jasus edwardsii (Hutton, 1875)
   イセエビ科の一種 Sagmariasus verreauxi (H. Milne Edwards, 1851) (= Jasus verreauxi)

   チュウゴクモクズガニ Eriocheir sinensis H. Milne Edwards, 1853
脊索動物門
 硬骨魚綱
   カラチョウザメ Acipenser sinensis Gray, 1835
   バルチックチョウザメ Acipenser sturio Linnaeus, 1758
   スチールヘッド Oncorhynchus mykiss (Walbaum, 1792) (= Salmo gairdneri)
   タイセイヨウサケ Salmo salar Linnaeus, 1758

   タイリクスズキ Lateolabrax sp.


<主な参考文献>
岩崎敬二・木村妙子・木下今日子・山口寿之・西川輝昭・西栄二郎・山西良平・林育夫・大越健嗣・小菅丈治・鈴木孝男・逸見泰久・風呂田利夫・向井宏 2004. 日本における海産生物の人為的移入と分散: 日本ベントス学会自然環境保全委員会によるアンケート調査の結果から.日本ベントス学会誌, 59: 22-44.
大谷道夫 2004. 日本の海洋移入生物とその移入過程について. 日本ベントス学会誌, 59: 45-57.
岩崎敬二 2007. 日本に移入された外来海洋生物と在来生態系や産業に対する被害について. 日本水産学会誌, 73: 1121-1124.

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