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 いま世界では1,700種以上の海産外来種が記録され、その数は年とともに増加の一途をたどっていると言われています。わが国からも50種以上の海産・汽水産外来種が知られていますが、やはりその数は年を追って増え続けています。外来種はこれまで、人の社会や経済、生態系にさまざまな問題を引き起こしてきましたが、それは陸上や湖沼・河川だけの問題ではなく、近年は海洋でも数多くの問題が指摘されるようになりました。

 そのため国連を中心に各国で海の外来種の侵入を未然に防ぎ被害を防止するためのさまざまな努力が続けられていますが、わが国でも2004年にいわゆる「外来生物法」が施行され外来種の侵入とその拡散を防ぐ第一歩が始まりました。しかし、この法律で規制対象とした「特定外来生物」の中に海産・汽水産種は含まれておらず、海産・汽水産種としては13種類が「要注意外来生物」として指定されるにとどまりました。だからといって海産・汽水産の外来種が引き起こす問題が小さいと考えて良いわけではありません。諸外国で起こっている海産・汽水産外来種によってもたらされたさまざまな被害をみるとき、私たちはその動向に無関心であることはできません。

 ここでは、わが国における海産・汽水産外来種の動向に注意を払い、これから起こるかもしれない被害を防ぐ資料とするため、これまでにわが国から知られる海産・汽水産外来種とそれらに関するいくつかの情報を紹介して行きます。

 ただし、ここで取上げた外来種は国外外来種(国外起源の外来種)に限り、サキグロタマツメタなど日本で在来種として知られるものは、現在の新たな分布が国外からもたらされたものによると推定される場合であっても、このリストには含めませんでした。
(大谷)
日本の海産・汽水産外来種リスト (岩崎ほか2004、大谷2004、岩崎2007等による)
非意図的外来種(人間活動に付随して非意図的に自然分布域外へ移動分散した種)
触手動物門
 苔虫綱
   和名なし Bugula stolonifera
軟体動物門
 腹足綱
   トライミズゴマツボ Stenothyra sp.
   シマメノウフネガイ Crepidula onyx
   カラムシロ Nassarius sinarus
   ミノウミウシの1種 Cuthona perca
 二枚貝綱
   ムラサキイガイ Mytilus galloprovincialis
   ミドリイガイ Perna viridis
   コウロエンカワヒバリガイ Xenostrobus securis
   イガイダマシ Mytilopsis sallei
   カガミガイ属の1種 Phacosoma gibba
   ウスカラシオツガイ Petricola sp. cf. lithophaga
   ホンビノスガイ Mercenaria mercenaria
環形動物門
 多毛綱
   カニヤドリカンザシゴカイ Ficopomatus enigmaticus
   カサネカンザシゴカイ Hydroides elegans
   ナデシコカンザシゴカイ Hydroides dianthus
節足動物門
 顎脚綱
   タテジマフジツボ Amphibalanus amphitrite
   アミメフジツボ Amphibalanus variegates
   アカシマフジツボ Amphibalanus venustus
   アメリカフジツボ Amphibalanus eburneus
   ヨーロッパフジツボ Amphibalanus improvisus
   ズージャンフジツボ Amphibalanus zhujangensis
   キタアメリカフジツボ Balanus glandula
   ココポーマアカフジツボ Megabalanus coccopoma
 軟甲綱
   ツノオウミセミ Paracerceis sculpta
   イッカククモガニ Pyromaia tuberculata
   チチュウカイミドリガニ Carcinus aestuari
   アオガニ Callinectes sapidus
   ミナトオウギガニ Rhithropanopeus harrisii
原索動物門
 ホヤ綱
   ヨーロッパザラボヤ Ascidiella aspersa
   クロマメイタボヤ Polyandrocarpa zorritensis
   マンハッタンボヤ Molgula manhattensis
緑色植物門
 緑藻綱
   アオサ属の一種 Ulva californica
   アオサ属の一種 Ulva scandinavica
   アオサ属の一種 Ulva armoricana

意図的外来種(何らかの目的のために人間によって自然分布域外へ意図的に移動または放逐された種)
軟体動物門
 腹足綱
   カムチャッカアワビ Haliotis kamtschakana
   アカアワビ  Haliotis tuberculata
   セイヨウトコブシ Haliotis tuberculata
 二枚貝綱
   イガイ科の1種 Sinomytilus sp.
   ヨーロッパヒラガキ Ostrea edulis
   オリンピアガキ Ostrea lurida
   アメリカガキ  Crassostrea virginica
   タイワンシジミ種群 Corbicula spp.
   シナハマグリ Meretrix petechialis
節足動物門
 軟甲綱
   コウライエビ Penaeus chinensis
   アメリカンロブスター Homarus americanus
   ヨーロッパロブスター Homarus gammarus
   イセエビ科の一種 Palinurus elephas
   イセエビ科の一種 Jasus lalandii
   イセエビ科の一種 Jasus edwardsii
   イセエビ科の一種 Jasus verreauxi

   チュウゴクモクズガニ Eriocheir sinensis
脊椎動物門
 硬骨魚綱
   カラチョウザメ Acipenser sinensis
   バルチックチョウザメ Acipenser sturio
   スチールヘッド Salmo gairdneri
   タイセイヨウサケ Salmo salar

   タイリクスズキ Lateolabrax sp.
緑色植物門
 緑藻綱
   イチイヅタ Caulerpa taxifolia

<参考文献>
岩崎敬二・木村妙子・木下今日子・山口寿之・西川輝昭・西栄二郎・山西良平・林育夫・大越健嗣・小菅丈治・鈴木孝男・逸見泰久・風呂田利夫・向井宏 2004. 日本における海産生物の人為的移入と分散: 日本ベントス学会自然環境保全委員会によるアンケート調査の結果から.日本ベントス学会誌, 59: 22-44.
大谷道夫 2004. 日本の海洋移入生物とその移入過程について. 日本ベントス学会誌, 59: 45-57.
岩崎敬二 2007. 日本に移入された外来海洋生物と在来生態系や産業に対する被害について. 日本水産学会誌, 73: 1121-1124.

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